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水始涸の便り

色が深く、夜が早くなる。余韻は長く残り、ワインは少しずつ温めたくなる。

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水始涸秋分
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友だちの恋人 × レ・コピンヌ・デ・コパン
友だちの友だちは、友だち。

The friends of my friends are my friends.

友だちの恋人

幕間に一杯、
Orange — アルザス

友だちの恋人
× レ・コピンヌ・デ・コパン

L'Ami de mon amie, 1987 — エリック・ロメール
prologue
セルジーの人工湖畔で白い建物を望む芝生と二台の自転車
夏の水辺で、関係が少しずつ動き出す

初夏の夕方、友だちが、知らない人を一人連れてくる。

友だちの友だちだという。三人でテーブルを囲むのは初めてで、最初のうちは、話がどこに向かうのかわからない。

栓を抜く。白ワインのつもりで、グラスに注ぐ。

注いでから、あれ、と思う。グラスの中身が、うっすら赤い。

口に含むと、赤い果実が明るくて、酸がきれいだ。そのまま飲み込むと、喉の奥に、ほんの少しだけ苦みが残る。

白だと思っていたものが、白ではなかった。

気づいたときには、もう少し、好きになっている。

1987年、パリ郊外の新しい街にも、そういう気づき方をした人がいた。

ブランシュは、セルジー=ポントワーズに越してきたばかりだ。市役所の新しい仕事と、新しい部屋。部屋にはまだほとんど家具がなくて、ホテルの一室のように見える。窓の外には、人の少ない広場と、遠くのパリ。

昼の食堂で、ブランシュはレアと同じテーブルになる。レアは年下で、よくしゃべって、物おじしない。二人はその日のうちに、友だちになる。

レアには、一緒に暮らしている恋人がいる。ファビアンという。

ブランシュにとってファビアンは、はじめ、友だちの恋人でしかない。


wine
Les Copines des Copains 2022 / オシェール
Les Copines des Copains 2022 / オシェール

一杯の肖像

グラスを光にかざす。

色は、チェリーの赤を水で薄めたような、明るい赤。縁のほうは琥珀に透けている。赤ワインほど濃くない。白ワインと呼ぶには、赤すぎる。

鼻を近づけると、香りは華やかだ。赤い果実と、花。黙っていても向こうから話しかけてくるような、人なつこい香りだ。

口に含む。果実は細身で、甘くはない。赤い果実の酸が先に来て、すっぱい果物をかじったときのように、口の中がきゅっとする。

飲み込むと、そのあとに、ほろ苦さが来る。皮ごと長く漬け込んだワインにだけ残る、かすかな苦み。嫌な苦みではない。むしろ、もう一口に手が伸びる理由になる苦みだ。

葡萄は、一種類ではない。ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、リースリング、ピノ・ノワール、オーセロワ、シルヴァネール、シャスラ。アルザスの畑に並んで育つ七つの品種を、ひとつのタンクで、皮ごと38日間いっしょに過ごさせる。白い葡萄が多いのに、ワインがうっすら赤いのは、そのあいだに色の濃い皮が、少しずつ色を移すからだ。

酵母は畑と蔵に棲むものだけ。足すのは、ごく少量の亜硫酸だけ。最後は、19世紀から使われている木製の垂直式圧搾機を手で締めて、時間をかけて搾る。

名前は、Les Copines des Copains。訳すと、「友だちの、女友だちたち」。


pairing
複数の手が異なる葡萄を一つの収穫箱へ移す様子
誰か一人ではなく、混ざり合う輪

なぜ、友だちの恋人にレ・コピンヌ・デ・コパンなのか

白だと思っていたものが、白ではなかった。

街の真ん中で — 冷たいうちに

ブランシュが最初に好きになるのは、ファビアンではない。

アレクサンドルという、人あたりのいい技師だ。レアの知り合いで、女の子の扱いに慣れていて、話がうまい。ブランシュは、ぎこちなく近づいては、うまく話せずに帰ってくる。

この映画の人たちは、よく泳ぎに行く。街のプールでは、四人の行き先が何度も交差する。ブランシュもレアも、水の中ではあまり自信がない。

グラスを開けるなら、このあたりがいい。冷蔵庫から出したばかりのうちは、華やかな香りが前に出る。赤い果実と花が、明るく話しかけてくる。アレクサンドルと同じで、最初に目を引くのは、いちばん声のよく通る香りだ。

一方、レアとファビアンの関係は、もうあまりうまくいっていない。

湖と森で — ぬるくなってくる

レアが街を離れているあいだ、ブランシュとファビアンは、二人で過ごすことが増える。

ファビアンはウィンドサーフィンに夢中な青年だ。二人は街はずれの湖へ行き、オワーズ川の岸を歩き、森の小道に入っていく。街の中心から離れるほど、景色は緑になり、二人は少しずつ正直に話すようになる。

グラスも、このころにはぬるくなりはじめている。華やかな香りが一歩下がって、赤い果実の酸と、あのほろ苦さが前に出てくる。最初は気づかなかった味が、いちばん手前にある。

ブランシュはそれでも、友だちを裏切ることはできない、と言う。

けれど、森のそばの、どこを見ても緑の場所で、ブランシュは気持ちを抑えきれなくなる。二人はそこで、初めてキスをする。

そのあと二人は、そろって緑の服を着ている。

あのほろ苦さは、たぶん、そういう味だ。好きになってはいけない人を好きになったときの、少しの後ろめたさ。それでも、もう一口に手が伸びる。

川辺のレストランで — グラスの底に

レアが戻ってくる。そして、レアのほうも、もうファビアンを選んではいなかった。レアの気持ちは、アレクサンドルに向かっている。

最後の場面は、オワーズ川のほとりのレストランだ。ブランシュとレアは偶然そこで顔を合わせ、ぎこちなく、それぞれの新しい恋を打ち明ける。ひとつ勘違いがあって、それがほどけて、ファビアンとアレクサンドルもテーブルにやって来る。

四人が並ぶと、服の色が目に入る。

レアとファビアンが、青。ブランシュとアレクサンドルが、緑。

組み合わせは入れ替わったのに、服の色だけが、元の組み合わせのままになっている。

グラスの底のほうでは、もう、どの品種の味なのか区別がつかない。華やかな香りも、赤い果実も、酸も、苦みも、ひとつの味として舌の上にある。38日間を同じタンクで過ごした七つの品種は、誰が誰の隣にいたのか、もう言えない。

ロメールはこの映画に、ひとつの格言を掲げた。Les amis de mes amis sont mes amis——友だちの友だちは、友だち。

オシェール夫妻は、このワインに、ほとんど同じ構文の名前をつけた。

薄い赤のワインなら、ほかにもある。それでもこの一本をこの映画の隣に置くのは、最初に惹かれた香りと、最後にグラスに残る味が違うからだ。ブランシュが最初に好きになった人と、最後に隣にいた人が違ったように。


terroir
エギスハイムの湾曲した石畳の路地で自転車を押す住人
円を描く路地を、いつもの速さで歩く

輪の中の村へ

セルジー=ポントワーズの市章には、青い帯と緑が描かれている。

蛇行するオワーズ川が、緑の森をぐるりと抱くように囲んでいる。その青と緑だ。ロメールが登場人物に着せた二つの色は、もともと、この街の紋章の色だった。

青い輪が、緑を囲んでいる。

そこから東へ、ヴォージュ山脈を越えたアルザスに、エギスハイムという村がある。

村に入ると、石畳の路地がゆるやかに曲がっている。曲がったまま、木組みの家々の前をどこまでも続いていく。中世の城壁に沿って、通りが同心円を描いているのだ。歩いているうちに、いつの間にか一周して、さっき通った花の窓の前に戻ってくる。

この輪の中の村で、ユベールとエイディのオシェール夫妻は、小さなドメーヌを営んでいる。畑は3.75ヘクタール。有機で育て、馬で耕し、手で摘む。

ヴォージュの山が西からの雨をさえぎるので、この斜面は乾いていて、日が長い。葡萄はゆっくり熟して、香りを溜めこむ。ゲヴュルツトラミネールの華やかさは、この日照から来る。

収穫の日、畑に並んでいた七つの品種は、同じ蔵へ運ばれる。

輪の中で摘まれた友だちたちが、ひとつのタンクで、38日間を過ごす。


how to drink
夕方のベランダでキッシュを囲み会話する二人の手元と青と緑の布
青と緑のあいだで、話はまだ続く

友だちの友だちが来る夜に

友だちから連絡が来る。今度の土曜、もう一人連れていってもいい?

いいよ、と返して、この一本を冷蔵庫に入れておく。

当日は、よく冷やしたボトルを、テーブルに出して少し置く。キッシュを焼いておく。ベランダがあるなら、窓を開けておく。

グラスは三つ。

注ぐと、友だちの友だちが、あれ、白じゃないんだ、と言う。

そこでラベルを見せる。Les Copines des Copains。友だちの、女友だちたち。

名前を訳したところで、テーブルの空気が少しゆるむ。話は、それぞれの友だちの話になって、友だちの恋人の話になって、昔好きだった人の話になる。

グラスがぬるくなるころには、苦みが少し前に出ている。話のほうも、たぶん、少しだけ本当のことになっている。

映画は、そのあとで観てもいい。102分。ボトルは、話しているうちに空いている。


epilogue

.

友だちの友だちは、友だち。

白だと思っていたものが、少し赤い。

輪ごと、注ぐこと。


Film

友だちの恋人 / L'Ami de mon amie (Boyfriends and Girlfriends) 1987 / フランス / 102分 監督・脚本: エリック・ロメール(「喜劇と格言劇」第6作) 出演: エマニュエル・ショーレ, ソフィー・ルノワール, エリック・ヴィラール, フランソワ=エリック・ジェンドロン, アンヌ=ロール・ムーリ

配信
レンタル Prime Video
2026年9月時点

Wine

Hubert & Heidi Hausherr / Les Copines des Copains 2022 ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリ、リースリング、ピノ・ノワール、オーセロワ、シルヴァネール、シャスラの混醸 有機栽培・馬耕 / 38日間のマセラシオン / 天然酵母 / 19世紀の手動垂直式木製圧搾機 / 亜硫酸はごく少量のみ アルコール度数 14.5%前後 Eguisheim, Alsace, France

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Les Copines des Copains 2022

Les Copines des Copains 2022

オシェール

Region
アルザス
Grape
Gewürztraminer, Pinot Gris, Riesling, Pinot Noir, Auxerrois, Sylvaner, Chasselas の混醸
Type
orange
Vintage
2022

鮮やかなチェリーレッド。明るい赤い果実の香りに、細身の果実味と酸、すっぱい果実感。長いスキンコンタクト由来のほろ苦さが残る、華やかな薄赤アンバー。

残りわずか

表示価格は税込

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Les Copines des Copains 2022
オシェール
¥4,950

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Film

L'Ami de mon amie

1987 / FR / Dir. エリック・ロメール

配信

レンタル
Prime Video

2026年9月時点

Wine

オシェール / Les Copines des Copains 2022

Gewürztraminer, Pinot Gris, Riesling, Pinot Noir, Auxerrois, Sylvaner, Chasselas の混醸

アルザス

¥4,950

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